導入前の課題紙の森林計画図では、準備も後工程も煩雑専用の測量端末は高価なため、各自が携行する程の台数が用意できない目印のない山林内での現在地把握には熟練が必要導入後の効果プランナーの普段使いの端末に林業に必要な地図が入るため、適地探索の作業が圧倒的に効率化目の前にある森の森林簿情報をその場で確認して、地点登録もできるため、施業計画がスムーズに立てられる広域合併により発足した組合員3000人強の森林組合森林組合おおいがわは、大井川流域の5つの森林組合が広域合併し、2002年に発足した森林組合です。 正組合員約1000名、 所有面積3ヘクタール未満の准組合員約2000名を合わせた、合計3000名強の組合員が所属しています。当組合では、木材価格の低下、森林の担い手の減少といった業界動向を受け、より効率的な施業を行うことが、森林を守っていく上で必須であると考えています。 この観点からシステム導入も積極的に行っており、LivMapについては、プランナー職の業務効率化を目的として2023年4月のテスト版の段階から導入をさせて頂き、以降継続して利用させて頂いております。紙の森林計画図では効率が悪く、専用機器は全員が持つことは難しい所有する山の場所がわからない50年位前までは、多くの人が山に入っていました。大勢いた自伐林家は自分の山の境界は把握していますし、地主さんに案内してもらうこともできたので、施業界の判断に難しさを感じることはあまりありませんでした。ところが、相続等で、子供や孫世代に受け継がれ、地主自身もどこの土地を持っているのかすらわからなくなりつつあります。森林組合に施業が委託され、施業界を判断するにあたっては、自ずと森林計画図と森林簿を見ながら判断することになるのですが、紙地図に森林簿情報を書き込んで現地に持って行き、等高線や林相と照らして自分の位置を推測することになり、作業は煩雑なものでした。施行地を探す作業の煩雑さ現地調査の確度を上げるために一部で専用のGPS機器も導入していましたが、高価であるためプランナー全員分は無いですし、常に携帯できるようなものでもなく、GISデータの事前準備にもそれなりの時間がかかっていました。また、通りがけに思いがけず施行地になり得る場所を見つけた際の特定にも時間がかかっていました。 その場所をGoogle Map等で記録し、事務所に戻って森林計画図と森林簿を検索する必要があり、その場での把握が困難でした。さらには、現地調査帰ってきてからは地点情報をGIS上に落とし込む作業が必要になりますが、これにも多くの時間を費やしていました。森林計画図・森林簿・微地形表現図が皆のスマホの中に。その上で記録を共有して業務を圧倒的に効率化当組合では、 LivMapを「森林施業プランナー」が利用しております。 LivMapは、ダウンロードすれば即、静岡県の森林計画図や森林簿を確認できます。 等高線・航空写真・微地形表現図の上にこれらが搭載されている上、地図のダウンロードができるため、圏外の現場であっても自分の現在地を重ねながら現地確認を行うことができます。こういった地図が普段使いのスマホに入り、かつ安価であるということは、LivMap の大きな利点です。 プランナー全員がアプリを利用している状態にできるため、以前のように施業適地を探すプロセスにおいて、紙地図を用意する必要も、専用機器を現場に持っていく必要も無くなりました。また、思いがけず施業適地を見つけた際にも、その場で確認ができるため、事務所に戻って確認してもう一度現地調査に行く、といった以前の流れを考えると、相当な時間削減になっていると感じます。また、現地で複数地図を切り替えて総合的に判断し、施業界を決めることができるようになりました。さらには、作業道新設を計画する際、どこにヘアピンカーブやスイッチバックを付けるのか微地形図等から事前にあたりをつけてから現地でナビゲートするという使い方もできるようになりました。また、現地調査に行くと、様々な状況を記録する必要があります。竹が生えている、蔓が巻いているといった状況の記録や、通行困難箇所、対処が必要な箇所、入口などの写真を撮って、後の工程につなげるといった流れもあります。 このような写真や地点メモを、LivMap上で簡単に管理できるようになったのも非常に大きいです。%3Ciframe%20width%3D%22320%22%20height%3D%22570%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.loom.com%2Fembed%2F802a08bca374413aa42c9a6a0eb025b6%3Fsid%3D0f3b6481-e3d1-498d-8dbe-a15257948891%22%20frameborder%3D%220%22%20webkitallowfullscreen%3D%22%22%20mozallowfullscreen%3D%22%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3E決め手は必要な地図がはじめから搭載されていることと、UI の良さ、改良の早さLivMapの導入を決め手になったのは、まずは林業に必要な地図がはじめから搭載されていることです。静岡県がGISデータの公開に積極的であったことも幸いし、我々が必要とする地図の多くははじめから搭載されていました。また、他社のアプリと比較してUIがシンプルで分かりやすく、皆が使いやすかったことも挙げられます。さらには、今までにもいくつかのお願いをしてきましたが、それを迅速に対応して頂いたことも導入の決め手になりました。 静岡県の微地形図の解像度を上げてほしい、地図を回転できるようにしてほしい、といった要望を出しましたが、比較的短時間で対応して頂きました。今後は、新職員の順応促進や災害対応への応用可能性も新入職員が仕事を覚える際に、従前は先輩職員の頭にある情報や技を、紙書類や、現場踏査の際に口頭で共有していましたが、LivMapを使うことで、グループに入れば過去の履歴を含めて検索可能になります。そのため、熟練を要していた境界確認や、蓄積された情報の共有に、LivMapは有効なツールであると考えています。また、以前島田市さんがLivMapの前身のアプリを災害対応で使われていたこともあり、何らかの災害が起こった際の被災状況把握にも有用だと考えています。当組合は、林業の中でも「当たり前」をアップデートしていくような存在になれればと考えております。